私論・野球敗因分析

だいぶ時間が経っちゃいましたけど、やっぱりこればっかりは書かないわけにいかないので。
野球日本代表、惨敗。
金メダルしかいらないと言ってたし、わたくしも実際そう思っていたので三決戦はどうでもいいのですが、
とにかく韓国相手の連敗は悲惨としか言いようがなかったですね。


まず最初に言っときますけど、球児!
準決勝のあの大事な場面で伝家の宝刀「落ちないフォーク」はいかんやろ・・・。
インハイのストレートか、ちゃんと落ちるフォークのどっちかを投げないと抑えられない場面だったら、
ちゃんとどっちかを確実に投げてくれないと。


それから矢野!
李を相手にインロー投げさせてライトスタンドに持ってかれたの、通算して何回目?
甲子園と東京ドームで、5回ぐらいやられてる印象があるぞ(うち3回ぐらいは井川だけど)。
あれが満塁とか1・3塁の大ピンチならともかく、
なぜ1死1塁でツーワンからインコース要求するかねえ。
岩瀬の球にキレがないのは受けてて解ってるはずなのに、あの冒険はまったく論外。


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巷間では「気迫が感じられなかった」とか言われてますけど、
こんなんもし勝ってたら、選手が同じ表情してても「気迫に満ちていた」って書かれるから。
そんな意見は無視したらよろしい。
あえて言うなら、ちょうど日本では高校野球をやってたこともあって、
のびのびとプレーすることが(特に一発勝負の試合では)好結果を生むのを見てたわけですから、
いっそ選手たちには高校時代のことを思い出してプレーすればよかったかもしれませんね。


でもそれ以外に、総括的な敗因はいくらでも挙げることができます。

まずかわいそうだったのは、7月のNPBの過密日程
五輪期間中に試合を飛び飛びにするためにああいう日程になったんでしょうけど、
今年は例外的に、7月が死ぬほど暑かった・・・
あれで完全に選手たちが参ってましたね。故障者が続出したのも無関係ではなかったと思います。
韓国の気温とかは知りませんけど、さすがに日本ほどじゃなかったでしょうし。
これは敗因の中でも最も不運な部類。
でももし五輪に野球が復活したときは、NPBの日程については熟慮すべきでしょうね。

星野監督の選手起用法については全く予想通り。
そりゃセリーグで、敵味方合わせて10年以上采配見てたら、
彼がああいう用兵をすることぐらい誰でも判ります。
だから、左打者には判で衝いたように左の岩瀬、というのも予想通り。
予選の韓国戦で、向こうから岩瀬に左の代打送って結果を出されても、
翌日から方針を換えるような人じゃないから。


結局、岩瀬は抑えるのに苦労するだろうなという予想もその通りになってしまいました。
全盛期の球のキレはもう望むべくもないですね。
直前にナゴドで阪神打線にタコ殴りされてるようじゃいかんやろ・・・。
それは阪神のウイリアムスも同様のことが言えますけど。


しかし、細かい投手リレーが必要というのは当初から解ってたのに、
なぜ先発型のピッチャーを7人も選んだかは理解に苦しむところ。
馬原がダメなら加藤ぐらいは入れとくべきだったですね。マイケルだって日本人ちゃうのん?


それとあと、軟投派のピッチャーは、国際大会には必要不可欠だと思います。
最近はサイドハンドでも剛速球を投げ込むピッチャーが増えてしまいましたが、
やはり星野伸彦や渡辺俊介に次ぐ、緩い球で勝負する選手を育てるのは
日本全体として重要なことではないでしょうか。リリーフならなお良しですけど。



えっ?それなら下柳を北京へ連れて行けばよかった!?
うーん、まあそういう斬新な発想も持つ必要があるってことで(笑)。

ストライクゾーンについてはいろいろと論議されていますけれど、
結局は気にしすぎて、審判の顔色伺いながら野球してたのが悪かったのではないかと。
準決勝の韓国の各打者、特に左打者を見ていて、杉内のアウトコース低めのスライダーを、
ストライクだろうがボールだろうが徹底して捨てていたのが印象的でした。
まともに手を出してたのは無死1・3塁から初球に併殺打った李だけで(笑)。
(だからこそ8回のインコース要求が信じられないのですが)


逆に日本の各打者は追い込まれるのを怖がって、初球から何でもかんでも手を出して、
自分から勝手にカウントを悪くして、決め球の落ちるスライダー(絶品!)に三振。
「自分にとってのストライク」よりも、
「審判にとってのストライク」を優先したというのが最大の失敗です。


昔の駒田じゃないけど、自分にとって好きな球ならボール球でも打てばいいし、
打てないと思う球なら2ストライクになるまで待てばいい。
ある意味野球の基本中の基本なんですが、
これを高給取りたちが忘れているようでは話にならないのです。

そして、チーム作りという難題について。
陸上の400mリレーチームを見た?
水泳のメドレーリレーチームを見た?
どちらも、世界が驚く「神技的な引き継ぎ術」で銅メダルですよ。
なんでも「リレーだけの合宿」がみっちり行なわれていたそうで。
陸上のバトンパスはともかく、水泳の引き継ぎの特訓なんて、
たぶんあまりどこの国もやってないんじゃないでしょうか。
その甲斐あってか、最終泳者・自由形佐藤久佳なんて
フライングにならないか心配なほどのタイミングで飛び込んでました。


日本人って、北島康介のような例外はあるものの基本的に、
フィジカルでもメンタルでも大陸の人間に比べれば劣ってるわけです。
だから個人競技ではなかなか勝てないけど、束になってかかれば世界相手でも勝負になる。
「あの人がやってるから私もやる」という独特な発想を持つ日本人の、
最大の長所はそこだと思うのです。


逆に言えば、その神技的連係プレーが発揮できなければ、
日本人なんて二束三文の値打ちしかないわけです。
連係プレーを完成させるには、どれぐらい時間がかかるか?
野球チームという大所帯なら、例えば高校野球では秋の大会期間中。
プロ野球ならキャンプとオープン戦。
どっちにしても最低2ヶ月(それも毎日)は必要、ってとこでしょうか。


WBCにしろ五輪にしろ、
日本代表が各球団からの寄せ集めチームになることは判りきっていることです。
丸々2ヶ月間の団体練習なんて絶対ムリ。
それでも、もし日本の野球力というものを本当に世界にアピールしたいのならば、
その年のNPBのシーズンを半分に減らすぐらいの覚悟をしないと、
これから先も、アテネや北京と同じ(WBCもそうなりかけたわけで)落胆をする羽目に遭うと思います。


妥協案としては、冬季五輪のカーリングのように、
NPBの中の1チーム(例えば昨年の日本一チーム)を出場させて、
外人選手の埋め合わせに、都市対抗野球のように補強選手を数名入れて送り出すという手。
レギュラーシーズンは勝率で勝負させればどうにかなりますし。
少なくともアマチュアで代表メンバー組むよりはましでしょう。
マチュアをアピールしたいのなら、まず都市対抗野球ぐらい中継してください。

最後に、たぶん誰一人として指摘しないことだし、
「アホか」と一笑する人もおられるかとは思いますけど、大真面目に書きます。
アジア予選と五輪本戦との違いを考えていて気付いたこと。


日本人の野球には、鳴り物の応援がないとね。
高校野球大学野球、社会人野球からずっと選手たちもその環境でプレーしてるんだし。
さっきも書いたように、日本人は基本的にメンタルの弱い民族ですから、
スタンドからの声援が耳に届かなければ、難局を打破するのは難しいと思うのです。


北京の球場には日本人も多く詰め掛けて、熱心に声を出している姿も見受けられましたが、
ラッパや太鼓の音に比べたらどうしても弱いわけで。
もっとも、ロッテファンが勢揃いして国際大会の応援に行ってくれたら
鳴り物は要らないし甲子園のビジター席は静かになるしで一石二鳥ですけど(笑)、
そうじゃなければ、ラッパの音色ぐらいは欲しいところ。


うーん、やっぱりそれを考えたら、日本で野球の国際大会やりたいよなあ。
アメリカでヒッティングマーチ流したら、たぶん怒られるんだろうなあ。
別に、球場で応援バット叩いて大声で歌ったって、真剣に野球見てないわけじゃないのに・・・。