吉本梅田花月花形落語寄席(3/3)

こけら落とし、と言えばいいんでしょうか!?でも新築じゃないですよね梅田花月自体は。
とにかく、最近の上方落語ブームに乗って、吉本興業が小遣い稼ぎを企んだ(笑)花花寄席。
記念すべき第1回の公演に行ってまいりました。

キャパ170名ほど?のうめだ花月は満員御礼。
開演前の客席ではあちこちで客同士が挨拶を交わしたりしていて、
常連の落語通や、あるいは落語関係者(演芸記者や評論家、放送作家など)が多くいる雰囲気でした。
あまり「初めて落語を見に来ました☆」って人は、いなさそうな感じ。


ステージが開きますと、4人の噺家が紋付で正座し、深く礼をしておりました。口上です。
上座から、林家染丸笑福亭仁鶴桂きん枝・そして・・・月亭八光!?


なんでハチミツやね〜ん!と心の中でツッコミが入りましたが、
オヤジ八方師匠は、タイガースの取材で出張しているそうで(笑)。
というわけで、司会を兼ねまして月亭一門の代表としての口上でありました。


上座こそ上方落語協会副会長の染丸師匠に譲りましたが、
吉本の最重鎮と言えばもちろん仁鶴師匠
その口上はなかなかに含蓄のあるおはなしでありました。

噺家の数も増えまして、注目度も上がり、定席の数も一つ増える運びとなりました。
 元来、落語は講釈・浪曲(順番は忘れました)に次いで、演芸の中では3番目の立場であった。
 矢面に立つことがなかったからこそ、300年の間命脈を保ち続けてこられた、とも言える。
 わが師匠の6代目松鶴は生前、
 『寄席の数が増えると下手な噺家のしゃべる場も増えて、衰退が早くなる』と申しておりました。
 講釈・浪曲が衰退し、落語にスポットライトが当たらなければならなくなったことによって、
 その光に耐えられる実力を蓄えられるかどうか、これから試される。」

現在の落語ブームに対し、ありがたいと感じつつも非常に危機感を持っていらっしゃるようです。
「場所が増えるとヘタクソにも場が与えられるので客は幻滅し、衰退する」
という六代目の説は非常に重いですよね。
業界こそ違えど、各種プロスポーツやレース業界でもあてはまる節は無きにしも非ず。
各選手が、光に耐えられるだけの実力を備えることができるんでしょうか?
特に今の○艇の○子リーグなどは。非常に将来が心配です。


話が脱線してしまいました・・・。
さて口上が終わっていったん幕が降り、いよいよ花花寄席の開幕です。
幕間でしゃべっていたのは桂三弥。7日に前座で出演予定ですよ。


この日の出し物は次のとおり。

笑福亭智之介 「時うどん」
月亭八光 「犬の目」
おしどり (漫才)
桂珍念 「紙入れ」
仲入
笑福亭鶴笑 「紙切り&立体落語西遊記
桂三風 「創作落語
(題不明)


吉本興業の親方にとっては、客が集まらなければやめればいいわけで、どうということはないんですが、
吉本の中堅・若手噺家たちにしてみれば、自分たちの命綱となりかねない花花寄席。
その記念すべきオープンの日に指名を受けたのが上記のメンバーです。
緊張しないわけがない!


しかも客席は、わたくしのような気楽な人間ばかりではなく、
上方落語について論じれば人語に落ちないような通の皆さま方がおおぜい。
さながら若手の落語コンクールみたいな雰囲気です。


正直言うと、非常に場の雰囲気が硬かったです。
場が硬いと、声に出して笑いたくても笑いづらい。
そうすると噺家はあわてる、あわてるとさらに・・・
という悪循環になりがちなもので、仲入り前に出て来た若手はかなり苦戦していました。


八光さんも一生懸命の熱演であったのですが・・・客席の反応は今ひとつ。
テレビ向きの奇抜な芸ではなく、本格的な話芸で勝負したいという意欲は見えましたが、
まだまだ稽古の量が少ないかな?
うめだ花月ということを考えれば、もう少し登場人物に特色をつけて
オーバーアクション気味にやってみるのも面白いと思いますけど。


わたくしにそう思わせた理由は、色物で今や寄席に引っ張りだこの「おしどり」と、
鶴笑さんのパペット落語が、客席から非常に良く受けたこと。
お客さんの中には、おしどりもパペット落語も見たことある人も多かったと思いますが、
それでも普通の落語に比べて笑いが多かったのは、
やはりうめだ花月という劇場に関係があったのかも知れません。


おしどり、本当にいいですねえ。吉本が目を付けて移籍させただけのことはあるわ。
これからの高齢化社会絶対にメシの種に困らないであろうコンビですよ(笑)。
欲を言えば、マコ(女のほう)のしゃべりにもう少し愛嬌があればいいんですが。まだ若いんだし。


昨年の繁昌亭創作賞を受賞した三風さんの、同窓会をテーマにした創作落語がトリとなり、
第1回の花花寄席は幕を閉じました。
帰りの階段を上るときに、お客さん同士のこんな会話が聞けました。

「どうでしたか?」
「う〜ん・・・舞台がざんないですね」
「ああ、おたくもそない思たはりましたか」

「ざんない」とは大阪弁で、「見るに忍びない、見苦しい」という意味。
わたくしどうにかこうにか意味だけは解りますが、まず使ったためしのない言葉です。
もうこんな言葉を使ってらっしゃる時点で、かなりの上方芸能通の客であることを確信。


わたくし、公演中は全然気づいていなかったんですが、
なるほど、ステージの印象が雰囲気を硬くさせた理由の一つだったのかも・・・。


ステージは新調された高座があって、そして背景には松の屏風。
仁鶴師匠などがNGKの出番のとき使ってらっしゃる背景ですが、
それが若手・気鋭の噺家のときには辛気臭く感じられるのかもしれませんね。
もう少し、気楽に楽しめそうな華やかな背景のほうが、吉本の若手らしくていいのかな。


とにかく、まだ第1回(今日のお昼で第2回)が終わったところですから、
いろんな意見や要求にこたえて、今後盛り上がっていければ面白いと思いました。

前売り券を持っていたので、入場時に記念の手ぬぐいをもらえました。
カードは5枚集めれば1回タダで入れるそうです。5回溜まるまで長続きして欲しいですね。