淀川左岸中津寄席(2/23)

繁昌亭や、ホール以外での落語会には足を運んだことがなかったわたくし。
家の近くの(と言ってもタクシーワンメーターでは行けない距離ですが)中津商店街で落語会をやっている、
メンバーもなかなか面白そう、ということで、先週の土曜日に行ってまいりました。


中津商店街は、阪急の中津駅近くにある小さくて細いアーケード。
梅田から徒歩で行ける場所にこんな前近代的(失礼)な空間があるのか!?と、
ネイティヴでない方なら驚いて不思議のない場所です。
ちりとてちん」草々初登場の場面のロケでも使われました。


この日は雪もちらついていましたが、何といっても大風!
トタン張り?のアーケードが、風に揺られてけたたましい音を鳴らしていました。
そんな中行われた落語会。今年1月にスタートして、今回が第2回。
奇数月は若手中心、そして偶数月は中堅・ベテランを招いての会だそうです。
狭い会場ですが、客は60人ぐらいでしょうか?大盛況でした。


この日の出演と出し物はこちら。


桂 つく枝  「ちりとてちん
笑福亭 仁嬌 「天狗裁き
桂 文喬   「研修医・山田一郎」
←新作なので字が正確かは不明(笑)

つく枝さんといえば、この前のドラマちりとてですよ。
草若師匠があの世へ行って、喜代美のお祖父さんの出迎えを受けるシーンで、
通り過ぎていった若旦那ご一行。その中の太鼓持ちの役が、つく枝さんだったのでした。
「NHKから、つく枝さんじゃないとこの役は務まらないんですよ。たってのお願いです〜」
という話で収録に行ったのに、
オンエアで映ったのは一瞬だけ。それも後ろ姿(笑)。
「70件ぐらい告知メール送ったのに・・・」と、ガックリのご様子でした。
そんなマクラで開演すぐの客席を沸かせたのですが、
ご本人にとっては笑えない話だったのかもしれません・・・。


落語の演目も「ちりとてちん」。
テレビでもよく見る、南光師匠版(吉弥さんやよね吉さんもこのヴァージョン)とはやや異なり、
知ったかぶりの「竹」はより嫌味が強く、旦さんと喜ぃさんの恨みもかなり深そうな演出でした。
つく枝さんの風貌が愛嬌ありすぎて、普通に演じていたのではキャラが伝わりにくいという判断なのか、
それとも単に教わった人がそのように教えたのか?(つく枝さんは桂文枝師匠の一門です)
豆腐の腐ったやつを加工した仕上げに、喜ぃさんがツバを吐きかけて混ぜ込むくだりは、
聴いている人によってはやや気分を損なう恐れも・・・。


二番手は仁嬌さん。
仁鶴師匠のお弟子さんですが、噺に入ってからの声や口調は、亡くなった6代目松鶴師匠のようなダミ声。
ちょっと懐かしくなりました。松鶴師匠が「天狗裁き」をかけていらしたかどうかはわかりませんが。
そういえば、仁鶴師匠も若いころはアクの強い声で売ったと聞きます。
鶴光さんも鶴瓶さんも濁った声ですもんね。笑福亭の伝統だな(笑)。


さて「天狗裁き」ですが、さすがベテランですね。
町人、かか、家主、奉行、そして天狗、
異なった身分(天狗を身分と言うのかはおいといて)の演じ分けが見事!でした。
この噺、わたくし初めて聴いたのが中学生のころ、旅行で行った熊本からの飛行機の中でした(米朝師匠の)。
そのころを思い出したりなんかして、大変懐かしく楽しませてもらいました。


そして、トリは文喬師匠。なんと新作の創作落語で来ました。
こういう噺を聴けるチャンスなんて滅多にないですから、本当にうれしい!
1年前まで、腎臓を悪くして入院していたときの体験談を元に作ったんだそうですが・・・


いやあ、面白かった!
本人いわく「これは99%ホントのドキュメンタリーです」なんておっしゃってましたが、
実際どこまでが本当でどこからウソか判断できません。そのくらい引き込ませ方の巧みなストーリー
医療問題や研修医制度の問題と関連して、まことに時宜を得たテーマ
創作落語は後味が良くないものが結構あったりするんですが、これは最後もスッキリ


しかも今のままでもじゅうぶん面白いんですが、まだまだ推敲する余地がありそうなんです。
師匠にはぜひ、この噺をさらに練り上げて、各地で披露していただきたいです。
そして後輩たちにも伝えて、未来の古典落語に仲間入りさせて欲しい、
そう思えるぐらい、面白い噺でした(interesting の意味でも funnyの意味でも)。



あと、落語会としての感想。
お客さんはほとんどが商店街の人か中津地区の皆さんと言うことで、非常にアットホームでした。
落語を生で見る経験のほとんどない方も多くいらっしゃったのではないかとも思いますが、
さすがは実力派の3人、皆さん熱心に聴き入っておられました。
あとは小学校高学年〜高校生のお客さんが増えれば、会としては最高なんですけどね。


それから、奥の住居スペースが高座で手前の商店スペースが客席になっていて、
その間の両脇にどうしても取り払えない仕切りがあったため、
角度によっては見にくい人がいたかもしれません。
見ているほうはそう窮屈さを感じなかったんですが、
文喬師匠いわく「動物園のオリの中でしゃべってるみたい」ってことでしたので、
改善が可能ならば検討したほうがいいかもしれません。


気になったのは、下座さんの入るスペースはあるか?ということ。
出囃子はテープで済ませれば良いので構わないんですが、
お囃子ができないとなれば、はめものの入る落語をかけることができませんから、
大ネタを聴くことは難しいかも知れませんね。
まあ、いっそのこと下座さんが客に見えるところでお囃子をやってくれたら、
それはそれで落語の勉強にもなって面白いですけど(笑)。


初めての中津寄席でしたが、前売1500円、じゅうぶんに値打ちがありました!
これからも時間が合えば、足を運んでみたいと思います。


※次回の落語会出撃予定・・・梅田花月・花形落語寄席(3/3)